グッチはかつて、他のラグジュアリーブランドと同じようにSpring/Summer、Fall/Winter、Cruise、Pre-Fallというサイクルでコレクションを発表していた。次の新作が届く頃には、前シーズンの服はすでに“古いもの”として扱われる。そんな業界のスピード感に対して、Alessandro Micheleは明確に違和感を示した。
グッチはランウェイショーの回数を削減し、年2回の「seasonless」な発表形式へ移行すると発表した。理由は単純だった。ファッションが“季節ごとに消費される前提”そのものに限界が来ていたからだ。
Micheleは、「服は、そうした言葉で区切られるよりも、もっと長い寿命を持つべきだ」と語っている。
重要なのは、グッチが経営難のブランドだったわけではない点だ。当時のグッチは、ラグジュアリー市場の中心にいた。オーバーサイズのテーラリング、ベルベットスーツ、クリスタルローファー、独創的なニットウェア——その世界観はSNSを通じて世界中へ拡散され、トレンドそのものを動かしていた。
そんなグッチが“数を減らす”選択をしたことで、業界全体が無視できなくなった。
実際、グッチの人気プロダクトの中には、「seasonless」という考え方をすでに体現していたものがある。
代表的なのが「Jackie 1961」だ。Alessandro Micheleによって復活したこのバッグは、Fall/Winter 2020で再解釈され、ブラックレザー、GG Supremeキャンバス、ライトブルー、ライラックなど複数のカラーバリエーションが展開された。
さらにストラップ交換によって異なるスタイルを楽しめる仕様になっており、“今季限定”ではなく、時間を超えて使われることを前提にデザインされていた。
同じ流れは「グッチ Horsebit 1955」にも見える。もともと乗馬文化由来のホースビットディテールを採用したこのラインは、派手にトレンドを追わず、構築的なフォルムと落ち着いたレザーで長期的な人気を獲得した。
結局、多くの人が本当に求めているのは、“新しさ”ではなく、“長く持ち続けたいと思える感覚”なのかもしれない。
2020年に購入したJackie 1961が、2026年でも自然に使えること。数年前のHorsebit 1955の限定カラーを探して、中古市場や海外在庫を追い続ける人がいること。それ自体が、「サステナブル」という言葉以上に、プロダクトの寿命を証明している。
ファッション業界は長い間、「新作=価値」として消費を加速させてきた。だがグッチは、その仕組みそのものに対して疑問を投げかけ始めた。
そしてグッチが本当に変えようとしていたのは、ショーの回数ではない。
“飽きること”を前提にしたラグジュアリーの価値観だった。