2020年にビューティーラインを本格始動して以来、エルメス ビューティはトレンドを追いかけるメイクブランドとは少し違う立ち位置を築いてきた。
強い発色や瞬間的なインパクトではなく、素材感、色彩、そして“持つ喜び”そのものを丁寧にデザインする姿勢。今回発表された新アイメイクコレクション 「Le Regard Hermès」にも、その美意識が色濃く表れている。
テーマは、視線に宿るニュアンス。 大胆に印象を変えるというより、光と影、質感の重なりによって、その人自身の表情を静かに引き立てていくコレクションだ。
コレクションの中心となるのが、6種類のOmbres d’Hermès クワテュール アイシャドウパレット。
一般的な高発色シャドウとは異なり、エルメスコピーらしいのは絶妙な“余白”のあるカラー設計。やわらかなローズ、モスグリーン、ディープブルー、アンバーオレンジなど、印象的な色を取り入れながらも、実際にまぶたへ乗せると透け感のあるシアーな仕上がりになる。
ラインナップは以下の6色展開。
中でも「Ombres Pétales」はローズとモーヴを基調にしたフェミニンなパレット。一方、「Ombres Fauves」はエルメスコピーを象徴するオレンジニュアンスを感じさせる温かみのある配色となっている。
フォーミュラには最大98%自然由来成分を採用。マット、サテン、シマーそれぞれの質感も、シルク素材から着想を得て設計されており、まるで上質なテキスタイルをまぶたに纏うような感覚に近い。
パッケージデザインを手がけたのは、エルメス シューズ&ジュエリー部門のクリエイティブディレクター、 ピエール・アルディ。
ホワイトラッカー、メタルパーツ、ブランドを象徴するオレンジボックス。エルメスらしいコードを取り入れながらも、全体は驚くほどミニマルにまとめられている。
さらに、ケースはリフィル交換可能な設計。使い捨てではなく、“長く付き合うプロダクト”として考えられているところにも、エルメスらしさがある。
今回のコレクションで特に印象的なのが、Trait d’Hermès Mascara。
ブラックだけでなく、ブルー、グリーン、パープル、ブラウンレッドなど、ニュアンスカラーを含む6色展開となっている。
とはいえ、モードメイクのような強いカラー演出ではない。光の当たり方や瞬きの瞬間にだけふと感じる、控えめな色彩設計が特徴だ。
ボリューム感を出しながらもダマになりにくく、速乾性のあるフォーミュラを採用。ホワイトラッカーのスリムなケースにゴールドリングを組み合わせたデザインも、ジュエリーのような存在感を放っている。
派手に主張するのではなく、近づいた時に初めて気づく美しさ。
今回の「Le Regard Hermès」は、そんなエルメスならではの美意識を、アイメイクという小さなディテールの中で静かに表現している。