ルイ・ヴィトンがビューティーに参入したこと自体は、実はそれほど意外ではない。
La Beauté Louis Vuittonが正式にローンチされる以前から、fashion weekのバックステージやbeauty editorたちの間では、その動きは半ば既定路線のように語られていた。なにしろ、lipstick caseひとつでもオブジェのように成立させてしまうブランドだからだ。
むしろ印象的だったのは、“ラグジュアリーブランドのコスメ参入”という定番の見せ方を選ばなかったこと。
Pat McGrathの起用によって、La Beauté Louis Vuittonは単なるbeauty businessではなくなった。長年ルイ・ヴィトンのランウェイを支えてきた彼女は、backstage beautyをファッション表現の一部へ押し上げた存在でもある。
だからこそ今回のbeauty lineには、単なる“化粧品”以上の空気がある。ルイ・ヴィトンが作ろうとしているのは、daily makeupではなく、luxury dressing ritualそのものだ。
La Beauté Louis Vuittonのファーストコレクションで最も注目を集めたのは、やはり「LV Rouge」。
satinとmatte、2種類のテクスチャーで展開される55色のlipstickは、色そのものよりも“ムード”に重点が置かれている。中でも「896 Monogram Rouge」は、トランクの内装や旅の記憶から着想を得たディープレッドとして象徴的な存在になった。
さらに「LV Baume」は10色展開のlip balmとして登場。単なるケアアイテムではなく、唇そのものをアクセサリーの一部として扱うようなアプローチが印象的だった。
「LV Ombres」のeyeshadow paletteも同様に、過度な装飾感はない。スモーキーなブラウン、レザーを思わせるカーキ、ゴールドのメタリックなど、どこかrunway lightingを連想させるカラー構成になっている。
このbeauty lineを特別なものにしているのは、makeup productそのものより、むしろbeauty accessoriesかもしれない。
Vanity Case Nice BB、Pochette Cosmétique PM、Pochette Cosmétique Rouge à lèvres──こうしたアイテムは、もともとルイ・ヴィトンのtravel universeに存在していたものだ。
つまり今回のLa Beauté Louis Vuittonは、新しいカテゴリを突然作ったわけではない。ブランドが長年培ってきた“旅と身支度”の文化を、現代的なbeauty languageで再編集したプロジェクトなのである。
実際、ルイ・ヴィトンのarchiveには1920年代のpowder compactやミラー、ブラシ類が残されている。1925年には、sopranoのMarthe Chenalのために制作された「Le Milano beauty case」、そしてピアニストJan Paderewski向けのcrocodile toiletry trunkも存在していた。
それらに共通しているのは、“美しさを持ち運ぶ”という発想だ。
そして今、その思想がようやく現代のbeauty lineとして完成した。
発売後、一部lipstickや限定caseにはwaiting listが発生し、SNSではrefillやspecial packagingをめぐる投稿も急増した。
でも、それも不思議ではない。
ルイ・ヴィトンにとってbeautyとは、単なるcosmeticsではないからだ。
それは、旅を続けるためのもうひとつのobjectなのだと思う。