2026/27年秋冬シーズンのルイヴィトンは、“エレガンス”よりも“存在感”を選んだ。 ニコラ・ジェスキエールが描いたのは、柔らかさでもミニマリズムでもない。山脈や深い森、広大な平原といった自然風景から着想を得た、力強く構築的なシルエットだ。
今季のキーワードは明確に「構造」。 大きく張り出したショルダー、身体から離れるコートのフォルム、重厚なマテリアル。服というより、まるで身体を包み込む“シェルター”のような印象すらある。
コレクションの中心にあるのはアウターウェアだ。 ワイドショルダーのロングコートは、クラシックなテーラリングをベースにしながらも、シルエットはほとんど彫刻的。オーバーサイズのレザージャケットには、トランク製造で培われたルイヴィトンならではのクラフツマンシップが色濃く宿る。
素材使いも印象的だ。 毛足の長いシャギー、圧縮感のあるウール、厚みを持たせたレザー。それぞれが単なる“生地”ではなく、フォルムを成立させるための構造材として機能している。
装飾も過剰ではない。 石のようなボタン、コート表面から立体的に浮かび上がるレザーフラワー、極太ステッチ。細部には触感の強さがありながら、全体は驚くほど静かにまとまっている。
そして今シーズン、多くのファッションファンが最も反応したのが「Noé」の復活だろう。
1932年、シャンパンボトルを5本持ち運ぶために誕生したNoéは、ルイヴィトコピーの歴史の中でも特別な存在だ。4本を立て、1本を逆さに収納するために設計された独特のバケット型シルエットは、実用性から生まれたものだった。
今回は、そのNoéがオリジナルに近いプロポーションとカラーリングで再登場。 Monogram canvas、ヌメ革のトリミング、ドローストリング仕様まで、アーカイブピースを思わせる仕上がりになっている。
興味深いのは、このバッグが単なる“復刻”に見えないことだ。 重厚なアウターが並ぶ今季のムードの中で、Noéの持つ無骨さや実用性がむしろ新鮮に映る。過去の名作でありながら、今の空気にしっかり接続されている。
もちろん、すべてが万人向けではない。 一部のコートは大胆すぎるほど大きく、シルエットも身体を美しく見せるというより、圧倒的なボリュームで空間を支配する方向に振り切っている。
ただ、それこそが今季のルイヴィトコピーなのだと思う。 静かなラグジュアリーが溢れる今、ここまで明確に“強い服”を打ち出してきたブランドは少ない。
流行を追うというより、自分たちのクラフトと歴史を改めて押し出したシーズン。 その姿勢自体が、今のラグジュアリーにおいてむしろ新鮮だった。