ここ数年、ルイヴィトンは一時的にモノグラムキャンバスから距離を置いているようにも見えていた。 コレクションの中心はレザーラインへ移り、ミニマルで静かなラグジュアリーが主流になっていたからだ。
しかし、Y2Kファッションの再燃やヴィンテージ回帰の流れとともに、LVモノグラムは再び存在感を強めている。 しかも今回は、単なる“ロゴブーム”としてではない。
ニコラ・ジェスキエールは、10年以上にわたってルイヴィトンのモノグラムイメージを現代的にアップデートしてきた。 現在の新作バッグを見ると、その方向性はかなり明確だ。 伝統的なモノグラムを残しながら、より柔らかく、日常に溶け込むデザインへ変化させている。
2023年に登場した「CarryAll PM」は、その流れを象徴する存在かもしれない。 一見するとNeverfullの延長線にあるようで、実際にはもっと肩の力が抜けている。
ルーズなシルエット、洗練されたレザートリム、マグネット開閉、取り外し可能なポーチ。 実用性は高いのに、いかにも“通勤バッグ”には見えない。 価格は約2,790ドル。 派手な新作というより、“気づけば使っている人が増えていた”タイプのバッグだ。
「Slouchy PM」(約2,590ドル)は、ここ数年のショルダーバッグトレンドをうまく取り込んでいる。 バッグ自体が少し自然に沈み込むようなフォルムになっていて、最初から使い込んだような抜け感がある。
以前のラグジュアリーバッグに多かった硬い構築感とは違い、今のファッションに合うのはこういう“少しラフ”なバランスだ。 ヴィンテージホーボーバッグ人気の流れともリンクしているが、しっかりルイヴィトンらしい品格は残している。
個人的に最も完成度が高いと感じるのは「Diane」かもしれない。 1990年代のアーカイブモデルをベースにしながら、現代的なジャカードストラップやサイズバランスにアップデートされている。
最近のラグジュアリーブランドは“復刻”を多用しているが、Dianeは単なる懐古主義で終わっていない。 デニム、オーバーサイズジャケット、スニーカーと合わせても自然に馴染む。 そこが今のユーザーに支持される理由だろう。
もうひとつ大きいのは価格の問題だ。 近年、フルレザーのラグジュアリーバッグは4,000ドルを超えるものも珍しくなくなった。 その中で、モノグラムキャンバスは“比較的手が届くルイヴィトン”として再評価されている。
「All In BB」は約2,460ドル、「Piano」は約2,590ドル。 もちろん安くはない。 ただ現在のラグジュアリー市場では、この価格帯が“エントリーライン”として機能しているのも事実だ。
特に「Piano」はかなり戦略的なモデルに見える。 ニコラ・ジェスキエールの就任10周年コレクションで復活したアーカイブモデルで、デザインは驚くほどシンプル。 過度なロゴ演出も、大きすぎる金具もない。
モノグラムキャンバス、程よいショルダー構造、長く使えるバランス感。 ルイヴィトン自身が「新たなMonogram icon」と表現しているが、それも大げさには感じない。
2010年代後半のロゴブームは、どこか誇張されたラグジュアリー感があった。 しかし今のルイヴィトンは違う。
モノグラムを前面に押し出しながらも、シルエットは柔らかく、スタイリングも自然体。 ブランドを強調するというより、“日常の中に自然に存在するラグジュアリー”へ変わっている。
だからこそ最近、またモノグラムバッグを持つ人が増えているのかもしれない。 以前ほど“頑張って見えない”からだ。