“トレンドの再来”と呼ばれるものは数多くある。でも、ルイ・ヴィトン × 村上隆のMulticolore Speedyは、その枠には収まらない。 このバッグは、一度もファッションの記憶から消えていなかった。
2000年代、Paris Hiltonが深夜のクラブ帰りに抱えていたあのバッグ。 Lindsay Lohanのパパラッチ写真にも映り込み、『Mean Girls』的な世界観とも完全にリンクしていた。 派手で、カラフルで、少し過剰。でも、それこそが魅力だった。
その後、2010年代半ばにコラボが終了すると、Multicolore Speedyはショップから姿を消し、日本のヴィンテージショップや海外リセールサイトで“探すバッグ”になっていった。 特に原宿や渋谷のヴィンテージフロアでは、状態の良い個体が入荷するとすぐに売れてしまうほど。
そして今、ルイ・ヴィトンはこの伝説的コラボを正式に復活させた。 しかも今回は、ただの復刻ではない。
2003年、当時のクリエイティブディレクターMarc Jacobsが、現代アーティスト村上隆にモノグラムの再解釈を依頼したことから、この歴史的コラボは始まった。 誕生したのは、33色のカラーで再構築されたMonogram Multicolore。 さらにCherry Blossom、Superflat Pandaなど、当時のラグジュアリーには存在しなかった“遊び心”が次々と加わっていった。
当時のラグジュアリーファッションは、まだどこか格式や重厚感を重視していた時代。 その空気を、村上隆は大胆に壊した。
だからMulticolore Speedyは、“静かな高級感”とは真逆だった。 ロゴは大きく、色は鮮やかで、一目でそれと分かる存在感がある。 でも、それが良かった。 持つ人自身が主役になれるバッグだったから。
今回のリエディションでは、その空気感を変に現代化しすぎていないのも良い。 Monogram Multicoloreは、バッグだけでなく、スカーフ、ベルト、ウォレット、パスポートカバー、さらにはスケートボードにも展開。 キャンペーンビジュアルにはZendayaを起用し、撮影はInez & Vinoodhが担当している。
そして中心にあるのは、やはりSpeedy。
特に注目されているのが、ホワイトベースの「LV × TM Speedy Soft 30」。 カラフルなモノグラムが全面に配置され、2000年代の空気感をそのまま残しながら、シルエットは少し現代的にアップデートされている。
ルイ・ヴィトン公式によると、このモデルにはしなやかな素材感のコーテッドキャンバスを採用。 トランク由来のメタルコーナーや、リボン型のKeybell、複数のPadlockディテールなど、コレクター心を刺激する要素が細かく詰め込まれている。 さらに取り外し可能なショルダーストラップ付きで、Crossbodyとしても使用可能。 単なるアーカイブ復刻ではなく、ちゃんと今のライフスタイルに合わせて作られている。
昔のMurakamiバッグは、正直かなり“時代のバッグ”だった。 小さくて、派手で、実用性はそこまで高くなかった。 でも今回のSpeedy Soft 30は、ウォレットやスマートフォン、ポーチまでしっかり入るサイズ感になっている。 実際に日常使いできるのが大きい。
だから今回の復活は、単なる懐古では終わっていない。 むしろ、当時を知らない世代が新鮮に反応している。
Gen Zにとって、Murakami Speedyは“思い出”ではなく、“憧れとして受け継がれたアイコン”に近い。 海外セレブの古いパパラッチ写真、Tumblrのアーカイブ、Pinterestのムードボード。 そういうインターネット越しの記憶から、このバッグを知った人も多い。
今のファッションは、ミニマルやQuiet Luxuryが主流になりすぎた反動もあって、逆に“ちゃんと個性のあるバッグ”が新鮮に映る。 その流れの中で、Murakami Speedyは圧倒的に強い。
Paris HiltonやNicole Richieが持っていた時代のアイコンだったバッグが、 今はZendaya、Rihanna、Bella Hadid、Kendall Jennerたちのスタイルにも自然に馴染んでいる。 それだけ、このデザインには時代を超える力がある。
しかも、復刻されたことで逆に希少性はさらに高まっている。 Cherry Cerisesシリーズなど、一部モデルはすでに二次流通市場でプレミア価格になり始めているほど。
結局、みんな少し飽きていたのかもしれない。 静かすぎるラグジュアリーに。
Murakami Speedyには、ちゃんと“うるささ”がある。 色も、ロゴも、存在感も全部強い。 でも、その過剰さこそが、今また魅力になっている。