ルイ・ヴィトンは、「Escale」コレクションに2本の限定モデル——Escale Malachite と Escale Turquoise——を追加した。
どちらも天然石を使用したモデルだが、今回の特徴は単なる stone dial に留まらない点にある。Louis Vuitton はマラカイトとターコイズをダイヤルだけでなく、ケースミドルそのものにも採用した。
正面から見ると、天然石が“埋め込まれている”というより、時計全体の構造に組み込まれているように見える。
しかし、この構造は見た目以上に難易度が高い。
マラカイトやターコイズは決して硬度の高い素材ではなく、薄く加工した際には特にエッジ部分が欠けやすい。そこで Louis Vuitton は、La Fabrique des Boîtiers によって新しい stone machining 技術を開発。天然石から monolithic case ring を形成し、その周囲をプラチナ構造で保護する設計を採用した。
つまり、この Escale の魅力は単なる色味ではない。
リベットを思わせるラグ、わずかに張り出したベゼル、抑えられたケースバックの厚み——そのすべてが天然石を守るためのデザインとして機能している。インスピレーション源となったのは、ルイ・ヴィトンのトランクに使われる金属製コーナープロテクターだ。
これこそが Escale コレクションの面白さでもある。伝統的な時計製造を前面に押し出すのではなく、“旅”というブランドのDNAを、そのまま時計のディテールへ変換している。
ケースサイズは40mm。昨年リニューアルされた通常の Escale より1mm大きいが、実際の装着感は非常にバランスが良い。
特にターコイズモデルは、天然の鉱脈模様によって存在感が強い。一方、Malachite モデルはより静かな印象を持つ。
マラカイト特有の層状パターンは、どこか Art Deco 的な空気感を漂わせる。Louis Vuitton はそこに深い色味の Rainforest Green Saffiano strap を組み合わせ、ジュエリーウォッチの方向には振らず、現代的な dress watch としてまとめている。
ダイヤルデザインも、新しい Escale の流れを継承している。
white gold の riveted hour markers、dauphine hands、そしてわずかにカーブした titanium seconds hand は、天然石ダイヤルの曲面に合わせて設計されている。外周には circular brushed finish の minute track を配置し、中央には天然石ならではの模様をそのまま残した。
ムーブメントには、Tambour にも採用されている LFT023 automatic calibre を搭載。
La Fabrique du Temps Louis Vuitton が設計し、Le Cercle des Horlogers が製造を担当するこのムーブメントは、4Hz 振動、50-hour power reserve、COSC chronometer certification を備える。
さらに、sandblasted bridges、diamond-polished bevels、22k gold micro-rotor といった仕上げによって、従来の“ラグジュアリーブランドのロゴウォッチ”とは異なる方向性を明確に打ち出している。
ここ数年の Louis Vuitton は、高級時計ブランドとして確実に変化している。
Tambour の刷新から始まり、Escale の再構築、そして今回の ornamental stone を case middle にまで使用する試みまで——そのアプローチは、単なる fashion watch の枠を超え始めている。
しかも、その進み方が非常に Louis Vuitton らしい。
伝統的な時計デザインをなぞるのではなく、trunk、travel、materials といったブランドの歴史そのものを、機械式時計の一部として再解釈しているからだ。
Escale Malachite と Escale Turquoise は、それぞれ30本限定。ケースバックには “1 of 30” の刻印が入る。価格は現時点で未発表となっている。