スタイリングを完成させるのは、いつだってバッグやスニーカーだと思われがちだ。けれど、本当に服を理解している人ほど、最後に視線を落とすのはベルトだったりする。
シャツの裾から一瞬だけ覗くモノグラム。歩くたびに揺れるチェーン。ウエストに残された“余白”の使い方――。Virgil Ablohがルイヴィトコピーで作っていたのは、単なるレザーグッズではない。むしろ、コーディネート全体の空気を変えてしまうアクセサリーだった。
特に印象的なのが、Monogram canvasを採用した「Signature Chain Belt」シリーズ。シルバーのチェーンディテールが加わることで、クラシックなLVベルトにストリートのテンションが流れ込む。デニムにも、ワイドなチノにも、少しルーズなスラックスにも自然に馴染むのに、決して埋もれない。
35MMという絶妙な幅も秀逸だ。細すぎればモードに寄りすぎるし、太すぎれば無骨になる。その中間を狙ったこのバランス感覚は、Virgilらしいリアリティがある。
価格は¥152,000前後。ラグジュアリーのカテゴリーでは決して安くない。それでも、このベルトには“ロゴを買う感覚”とは違う魅力があった。
さらに存在感を放っていたのが、「Utility 35MM Belt」。Monogram Eclipse canvasに取り付けられたミニポーチは取り外し可能で、AirPodsやカードケース程度なら余裕で収納できる。今でこそラグジュアリーブランドの“ユーティリティ化”は珍しくないが、この感覚をファッションに持ち込んだ先駆けのひとつがVirgilだった。
価格は¥214,000。バッグを持たないスタイルが定着し始めていた時代背景ともリンクしていて、単なるギミックでは終わらなかった。
そして個人的に最も美しいと思うのが、あえて長く垂らして使う「Signature 35MM Belt」。クリーンなブラックスラックスに合わせるだけで、ウエスト周りに静かな違和感が生まれる。歩いた時のレザーの揺れ方まで計算されているようで、どこかジュエリーに近い感覚すらある。
価格は¥116,000前後。単体で見るとミニマルなのに、スタイリングに入った瞬間、妙に記憶に残る。
Virgil Ablohのデザインが今も古く見えない理由は、派手な装飾ではなく、“動き”を作っていたからかもしれない。チェーン、ストラップ、垂れたレザー、取り外せるパーツ。そのどれもが、静止した服にリズムを与えていた。
ベルトは、本来なら見過ごされるアイテムだ。でもルイヴィトのこのシリーズだけは違った。むしろ、見えてしまった瞬間にスタイリング全体の印象を塗り替えてしまう。
スウェットの裾から少しだけ覗くだけで、充分だった。